3. 8020になるための方法開発とその応用
これまで見てきたように、8020運動の取り組みは健康創造(サルトジェネシス)の考え方そのものでした。そして、そこでは、「子どものころから生涯を通しての生活習慣づくり」、またそれを支援する環境づくり、また社会的取り組みが重要なアプローチとなります。
人々の健康づくりの面では、WHOは1978年に「2000年までに世界の全ての人々に健康を」とした「アルマ・アタ宣言」を提唱し、1986年「オタワ憲章」でヘルスプロモーション(注1)の考え方を示しました。また、我が国のプライマリヘルスケア(注2)としては、1978年「第一次国民健康づくり運動」、1987年「第二次国民健康づくり運動
(アクティブ80ヘルスプラン)」、2000年「第三次国民健康づくり運動(健康日本21)」を策定し、2002年には健康日本21を支援する法律「健康増進法」が成立しました。
一方、8020運動は、1989年に厚生省(当時)成人歯科保険対策検討会で取り上げられて、以来20年以上にわたる歯の健康づくりのスローガンとして全国的な展開の出発点となりました。これを踏まえて、健康日本21では8020達成の人の割合を「2010年までに80歳で20歯以上持つ人の割合を20%以上」とする目標を立て、さらに2007年の「新健康フロンティア戦略:健康国家への挑戦」では、歯の健康はQOLに密接に関係していることに着目し、「8020運動の推進」を提唱しています。
(注1)ヘルスプロモーション:自らの健康を維持し、改善することができるようにすることと、その環境づくり。
(注2)プライマリヘルスケア:WHOが唱えた、すべての人々が健康になるための施策づくり。
[例] アルマ・アタ宣言(世界の人々に健康を)
生活習慣の維持と健康・長寿
生活習慣の維持が健康と長寿に深く影響することを、1965年よりカリフォルニア州アラメダ地区で住民の健康状態を長期に追跡したブレスロー博士たちは、[図1] の7つの習慣を持って社会生活をしている人は、そうでない人に比べて長寿であることを明らかにしています。そして、日本の森本教授はこれらに「自覚的ストレス量」を加えて、8つの習慣を提唱しました。
口腔の健康維持と生活習慣について (愛知県内での疫学調査)
一方、愛知県内で8020の人とそうでない人へ訪問インタビューして、歯の保有のためにはどのような生活習慣や態度が関係していたかの疫学調査が行なわれました。その結果、8020の人には子どものころから80歳の現在までの生活で[図2]のような6つの特徴が明らかになりました。 さらに、80歳の現在においては[図3]のような3つの特徴が挙げられます。
「歯の健康づくり得点」を活用した調査結果 (愛知県飛島村での取り組み)
歯の健康づくりの取り組みとして、上記の生活習慣や態度を点数化して、愛知県飛島村での調査用に作成されたのが「歯の健康づくり得点」[図4]です。これを住民777名を対象として、1999年に質問調査を行ないました。
この1999年の得点及び保有歯数をベースラインとして、継続的な調査を行なっています。 5年目の調査結果では、[図4]の合計得点が13点以下の人は14点以上の人に比べて1歯でも喪失するリスクは1.67倍、さらに3歯以上の多数歯を喪失するリスクは、15点以下の人は16点以上の人に比べて3.16倍もあることが分かりました。
これらの結果を見ると、歯の喪失と規則正しい生活習慣や態度には、深い関係があることがお分かりいただけると思います。皆さんも、ご自身の得点を確認してみてください。
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